秋の気配が一層深まりました。皆様、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
旧櫻花舎がかつて渋谷ジァンジァンで「マリヴォー・シリーズ」をスタートさせたのが1992年ですから、はやいものであれから10年たちます。日本にほとんど知られていないマリヴォーの奥の深い作品を若い俳優たちと共に舞台化していく作業は、大変でしたがその手応えは本当に面白いものでした。同時にいつも日本の作家との出会いを夢見ておりました。
久生十蘭の「湖畔」を読んだのは、もう7、8年前になります。「湖畔」の面白さは他に類をみないもので、いつかきっと舞台化してみたいと心に強く思ったものです。でも久生十蘭という作家のことを知り始めたのはごく最近です。そして、知れば知るほど、日本にこんな型破りな作家がいたのか・・・と、引き込まれてゆきました。
鎌倉にいらっしゃる奥様に上演の許可願いを申し出たとき、かつて映画化の話は何度かあったそうですが、ほかの作品は許可しても、この作品だけは最後まで許可しなかったとのことでした。そして嬉しいことに、この度はその舞台化の許可をくださったのです。
櫻花舎は名前も新たに「咲良舎」となり、これを機会に新しい顔ぶれで、新しい作品づくりに取り組んで参ります。今回は、美術に島次郎さん、衣装に加納豊美さんなど強力なスタッフに恵まれ、また、木山事務所から内田龍麿さん、水野ゆふさんを客演に迎え、稽古場は意欲的なエネルギーに溢れております。
物語は、主人公が自分の二歳になる息子に宛てた手紙・・・という設定ではじまります。
「この夏、拠ん所ない事情があって、箱根蘆の湖畔三ッ石の別荘で貴様の母に手にかけ、即日、東京検事局に自訴してでた・・・」
現代社会によみがえる久生十蘭の壮大な世界の再発見。
皆様、12月の「湖畔」をお見逃しなきよう、是非、是非、ご来場ください。
咲良舎代表 守輪咲良